仏跡巡礼の旅

仏教遺跡・仏教美術

南天竺ナーガルジュナコンダ

ナーガルジュナコンダ遺跡

インド北部に誕生した仏教は紀元前3世紀に登場したアショーカ王によりインド(含む現パキスタン、アフガニスタン)やスリランカに広く伝わりました。
南インドに伝わった仏教は、この地に栄えたサータヴァーハナ王朝(イクシューヴァク王朝)の庇護の下で栄えました。
そのような国情の中で、2世紀に現れたのがナーガルジュナ(龍樹)菩薩です。
龍樹菩薩は部派仏教の中で次第に栄えてきていた大乗仏教の「空」の思想を体系化しました。
それ故に、龍樹菩薩は「大乗仏教の祖」であるとか、「八宗の祖」といわれ、私達大乗仏教徒にとってはとても大切な聖地です。
元来、遺跡はベンガル湾に注ぐクリシュナ河に沿って点在していたのですが、ダム建設によって水没することをうけて、重要な遺跡を水没を免れる丘の上に移設し、ダム完成後は島となり全体をナーガルジュナ・コンダとして遺跡を保護しています。

元来この地域には26の仏教遺跡が発掘されていました。
水没を免れるために丘の上にいくつかの遺跡が移設されました。
中でも重要な遺跡は僧院跡で、僧院の入り口に結界にあたるムーン・ストーンを配し、左右に脇堂を設け右手に仏塔を配し、左手に仏立像を拝するという独特の設計が見られます。
通常、上座部仏教では仏塔礼拝と菩提樹礼拝が主で、仏像礼拝は大乗仏教徒に多く見受けられることもあって、上座部と大乗が同居している僧院跡として、他では見ることのできない意図です。
また、仏塔跡にはコリント式の柱が四方に配され、遠くギリシャの影響を見ることができます。

一方、クリシュナ河に沿って点在していた遺跡の状況は島内にある博物館で様子を知ることができます。 水没前のこの地方の遺跡の状況を模型を使って展示するスペースをはじめ、僧院跡から発掘されたライム・ストーンという石灰岩でできた南天竺様式の仏立像や北インドの仏教遺跡ではあまり見ることのない仏伝彫刻が豊富に展示されています。
その他、沐浴場の跡や井戸の跡なども移設されています。

尚、ナーガルジュナ・コンダはダム湖の中にある島全体が博物館になっているため乗合船で訪ねなくてはならず時間に制約がございます。 できれば、お弁当を持ってゆっくりと散策したい遺跡です。
ちなみに金曜日はナーガルジュナ・コンダは休島となり、船も出航しません。
島内の博物館は写真撮影が禁止されています。

アヌプー

ナーガルジュナ・コンダへのボート乗り場から南東に約7km、ナーガルジュナ・コンダから南東約4kmに位置しているのがアヌプーの遺跡です。
この遺跡には仏塔の跡と僧院の跡があり、特に丘の斜面に造られた講堂跡が印象的な遺跡です。
僧院とはナーガルジュナ・コンダ同様に入り口左右に脇堂を配した設計で、こちらの僧院跡には化粧板として利用されたライム・ストーンが貼り付けられており、このされた列柱にはギリシャ様式を思わせる柱飾りが施されています。
さて、講堂の跡ですが、丘の斜面に沿って方形のスタンドが形成され、まるでギリシャの円形劇場を思わせる造りになっており、頂上部に王の座があり、肉声でも充分に聞くことができ、当時の東西交流の証として重要な遺跡です。